硫化水素解説 作用機序編

解説

皆さんどうも、kmです。今回は硫化水素解説の作用機序編をお届けします。
硫化水素そのものの特徴については別の記事で紹介していますのでそちらをご覧ください。
硫化水素の紹介→https://www.yukkurikm.site/ryuukasuiso-syoukai
この記事の動画版はこちらになります。

それでは作用機序がっつり解説していきます。

エネルギー産生
細胞内で行われているエネルギー産生は
多くの代謝系が関わってまして、非常に複雑になっています。
それを一目でわかるようにまとめてある非常に分かりやすい図がこちらです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ミトコンドリア

これだけまとめられていても、
一つ一つ見ていくのは非常に時間がかかってしまうので、
今回は必要な部分だけ触れることとします。
今回注目していくのは画像の右上に示されている電子伝達系です。
いろいろややこしそうですが、「硫化水素はエネルギー産生の最後の部分に作用する」
という風に思っていただければ大丈夫です。

この図を見る限り代謝の一部はミトコンドリア内で行われているということが分かりますね。

ミトコンドリアとは?

https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textintro/Chapt7.htm

ミトコンドリアというのは我々の細胞の小器官です。
仕事としてはATPと呼ばれる物質を作っています。
ATPは体内の様々な反応に使用されるため、エネルギーの通貨的な存在の物質です。
このATPを作るためにいろいろな酵素や仕組みが作用しているわけですが、
シトクロムcオキシダーゼはそのうちの1つです。

シトクロムcオキシダーゼと電子伝達系
シトクロムcオキシダーゼというのは電子伝達系の構成因子の一つです。
電子伝達系は、ATPを作る反応系という理解でOKです。

https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0790.html

電子伝達系を細かく見るとこんな感じになります。
なかなかややこしそうですが、詳しいことは全てすっ飛ばして問題ないありません。
電子伝達系には4つの複合体があります。
これらが協調的に作用することでATPを作るわけです。

そして、シトクロムcオキシダーゼはこの複合体のⅣのことです。
シトクロムcオキシダーゼはⅠ~Ⅲまでの複合体から得られた電子を
酸素に受け渡して水を生成し、水素イオンを移動させるという働きをしています。
そのため、硫化水素によってシトクロムcオキシダーゼが阻害されると
酸素を使用した反応が行えなくなり、酸素はあるが使用できないため、
細胞は実質的に酸欠状態に陥ります
また、ここでは詳しくは触れませんが、シトクロムcオキシダーゼによって移動させられた
水素イオンの濃度勾配を利用してATPを産生しています。
そのため、シトクロムcオキシダーゼはATP産生に非常に重要です。

https://numon.pdbj.org/mom/5

続いてシトクロムcオキシダーゼの構造です。
シトクロムcオキシダーゼはタンパク質なので、
このように非常に複雑な構造をしています。ちなみにこれはウシのです。
詳しい作用機序についてはここでは触れませんが、
詳細を知りたい方は以下を参考にしてください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/45/10/45_10_696/_pdf/-char/ja

そして、タンパク質ということで察した方もいるかもしれませんが、
硫化水素が作用する部位ははっきり特定できていません。
阻害するということがよく知られているという状態です。
詳しいことが書かれていそうな文献にはたどり着いたんですが、
有料で中身が見られませんでした…。
https://portlandpress.com/biochemsoctrans/article-abstract/41/5/1312/66352/Sulfide-inhibition-of-and-metabolism-by-cytochrome?redirectedFrom=fulltext

作用機序解説
作用機序は「ミトコンドリア内のシトクロムcオキシダーゼと
結合することで細胞呼吸を障害する」
でしたね。
これについて今まで得られた情報をまとめてみていきましょう。

ミトコンドリアでは、ATPを産生するためにいろいろな系が複雑に動いています。
そして、ATP産生の最後にはシトクロムcオキシダーゼを有する電子伝達系が存在しており、
硫化水素はそのシトクロムオキシダーゼを阻害する。
すなわち、硫化水素は「酸素を使った細胞のATP産生を
阻害する作用を持っている」
ということになりますね。
それでは「ATPの産生が出来ず、エネルギーが作れないために毒となる」
かと言われるとそれは少々違います。
硫化水素によって確かにシトクロムcオキシダーゼが阻害されるため
電子伝達系は阻害されますが、エネルギー産生方法はそれだけではないからです。

エネルギー産生は主に2種類存在しており、
それは「好気性代謝」と「嫌気性代謝」です。
そして、シトクロムcオキシダーゼが関与しているのは「好気性代謝」です。
そのため、「好気性代謝」が障害された場合、
何とかしてATPを生産したい細胞は「嫌気性代謝」を行ってATPを獲得しようとします。
よって、硫化水素が作用すると、細胞は嫌気性代謝を行うようになります。
それでは、嫌気性代謝の亢進によって何が起こるのか?

嫌気性代謝の亢進によって何が起こるのか
まずは嫌気性代謝について軽く解説します。

https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-2/keyword1/

これはグルコースを代謝する「解糖系」と呼ばれる回路です。
この図の最後に好気的条件と嫌気的条件で反応が分かれる部分がありますね。
ここで酸素のあるなしで代謝経路に分岐が起こります。
硫化水素の作用によって細胞は実質的に酸欠状態になっているので、
ここでは嫌気的条件に当てはまります。
この代謝ではATPは産生できるのですが、それに伴って乳酸が発生してしまいます。
これが大きな問題になります。
この代謝が行われることによって発生する大量の乳酸によって血液が酸性に傾き、
生体のpHバランスが崩れてしまうからです。専門用語ではこれを「アシドーシス」と言います。

このアシドーシスによって何が起こるのかというところですが、
全身の様々な部分へ支障が出ます。
あまりにも広範囲に影響が及ぶため一言には示せませんが、
よい説明を見つけたので引用します。
「具体的には,(1)ATP依存性3Na+/2K+交換ポンプの停止とATP依存性H+/K+ポンプによる細胞内から細胞外へのK+移動による高カリウム血症,(2)心筋では活動電位の低下,β受容体減少に伴うカテコラミン不応性(文献1),Ca2+の感受性低下に伴う収縮力低下(文献2),(3)解糖系酵素の活性低下による糖代謝阻害から高血糖,(4)アデニル酸シクラーゼ阻害から細胞内情報伝達物質であるcyclic AMPの減少,(5)神経系ではグリア細胞腫脹など細胞機能障害とCa2+チャネル透過性低下による興奮性シナプス伝達抑制(文献3),などが報告されています。」https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3880#:~:text=このように,アシドーシスは,のが妥当でしょう。から引用
この記述からかなり多くの部分へ障害が出ることがわかると思います。
そういうわけで、硫化水素は毒となるというわけです。

それではだいぶ長くなりましたが、硫化水素の作用機序についての解説は以上です。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

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